税制非適格SOの使用例

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税制非適格SOの使用例

退職金型の1円ストック・オプション

最終更新日:2021年5月30日
 

税制非適格SOは税制適格に比べると税務上の優遇が少なく、一見すると使いづらいように見えますが、上場企業においては退職金型の1円ストック・オプションとして活用されることがあります。

退職金型の1円ストック・オプション(会社法改正により0円ストック・オプションの可能性もあり)とは、主に下記の特徴を有するストック・オプションを言います。

・行使価額が1円の税制非適格ストック・オプション
(時価=株価を大きく下回る行使価額であり、時価以上発行という税制適格要件を満たさない)
・行使可能な期間が「退職から10日間」などのように、退職しなければ行使できない設計となっている
・上記設計により、税制非適格SOではあるものの、行使時に給与所得ではなく退職所得として扱われるため、退職金と同様に税率が低い(付与者の手取りが大きい)
・主に上場企業のマネジメントに対する退職金をストック・オプションの形で付与する際に用いられる

上記のうちで最も特徴的なのは「退職から10日間」などのように、退職しなければ行使できない設計となっている点であり、これは「権利行使期間が退職から10日間に限定されている新株予約権の権利行使益に係る所得区分について」という内容で、株式会社伊藤園による国税照会の結果が下記サイトで参照できます。

退職金型の1円ストック・オプションに関する国税照会の結果
(退職所得として扱って差し支えない旨の回答)

 

 

自由設計型のストック・オプション

最終更新日:2021年5月30日
 

上記の退職金型1円ストック・オプションのように、税制非適格SOではあるものの、一定の要件を満たすことでインセンティブ・プランとしての利用価値が生じることがあります。

税制非適格SOは税制適格要件を満たさないSOとして整理されるため、裏を返せば設計自体にはある程度の自由度があり、未上場のベンチャー企業においてもこの観点から活用されることがあります。

自由設計型の税制非適格SOに関する活用事例としては下記が挙げられます。

・M&Aの際にその時点の時価で発行会社が買取可能なSOとして発行

この場合、付与者は給与課税扱いと解釈されますが、それでもM&Aに伴うキャピタルゲインが一定程度担保されるという意味では価値があるSOと言えます。

なお、この取得条項自体は税制適格SOに組み込んでおき、発動した時点で自動的に税務上の扱いが税制非適格SOに移行するような建付けも可能と解釈されており、IPOとM&Aを並行して検討するようなベンチャー企業では割と多く見受けられます。

・社外アドバイザー等への発行

税制適格要件のうち、付与対象者要件(主には社内者要件)を満たさない社外のアドバイザー等にSO発行する場合に、税務面で不利な側面はあるものの、ないよりはあった方がプラスという思惑で税制非適格SOが用いられることがあります。

ただし、付与される側からすると付与時の払込があったとしても有償ストック・オプションの方がサクセスケースにおける手取が大きくなる場合があり、双方合意に基づき税制非適格SOではなく有償SOの付与とされるケースも多々あります。

なお、社外者へのSO付与の選択肢として「社外高度人材に対するストックオプション税制」もあり、要件としてのハードルはやや高めに設定されているものの、これを満たすと社外高度人材に対して税制適格SOと同様のSO発行が可能となります。

詳細は上記リンクから経済産業省による制度解説や申請書類などが確認できますが、主には下記対応が必要となる制度となっています。

・社外高度人材活用事業分野開拓計画の策定
(社外高度人材1名につき1つの計画を策定)
・上記計画とともに経済産業大臣及び事業を所管する大臣に計画申請書を提出
・認定を受けた場合、認定後の手続きとして毎期報告
(日本国内のみで社外高度人材を活用していること、社外高度人材が日本の居住者があること、SO行使状況等)

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