非上場企業のM&A

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非上場企業のM&A

基本的な考え方

最終更新日:2021年5月30日
 

非上場企業のM&Aについて適正なバリュエーション(企業価値評価)とは何か、このテーマについてはファイナンス・会計・税務の観点から様々な考え方がある一方、実務的に統一された手法は存在しないというのが実状と言えます。

その中で、参考とすべき資料として、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を2020年3月に公表しました。本ガイドラインの中で、中小M&Aに関するバリュエーションにつき、下記の記載があります。

バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)
仲介者・FA や士業等専門家が、譲り渡し側経営者との面談や提出資料、現地調査等に基づいて譲り渡し側の企業・事業の評価を行う。
中小 M&A では、「簿価純資産法」、「時価純資産法」又は「類似会社比較法(マルチプル法)」といったバリュエーションの手法により算定した株式価値・事業価値を基に譲渡額を交渉するケースが多いが、事例ごとに適切な方法は異なるため、相談先の支援機関に相談の上、各事例において選択することが望ましい。
また、算出された金額が必ずそのまま中小 M&A の譲渡額となるわけではなく、交渉等の結果、「簿価純資産法」又は「時価純資産法」で算出された金額に数年分の任意の利益(税引後利益又は経常利益等)を加算する場合等もあり、当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となるという点は理解されたい。
これら中小 M&A の譲渡額の算定方法の詳細については、参考資料2「中小 M&A の譲渡額の算定方法」を参照されたい。

 

上記ガイドラインにおいては、下記4種類の評価手法が解説されています。

①簿価純資産法
②時価純資産法
③マルチプル法
④倍率法

④の倍率法については『「簿価純資産法」又は「時価純資産法」で算出された金額に数年分の任意の利益(税引後利益又は経常利益等)を加算する場合等もあり』と紹介されており、明確に「倍率法」という用語は使用されていません。

一方、実務的にはM&A仲介会社が仲介する案件の多くにおいてこの倍率法が採用されているため、下記にガイドラインの参考資料に基づく解説を加えます。

 

倍率法

最終更新日:2021年5月30日
 

倍率法につき、「中小M&Aガイドライン」に実務的な解釈を加えて表現すると、「時価純資産に3年分程度の調整後営業利益を加算した額」を企業価値とみなし、これにネットデット等を反映させて株式譲渡対価を決定する方法と言えるでしょう。

時価純資産
デューデリジェンス等の結果に基づき、含み損益を反映させた純資産

調整後営業利益
デューデリジェンス等の結果に基づき、買収後に発生しなくなるコスト等を反映させた営業利益(実務上はEBITDAを採用することもあり)

 

同ガイドライン参考資料において、倍率法は下記のように記載されています。

<参考>時価純資産法(又は簿価純資産法)に数年分の利益を加算する場合
時価純資産法(又は簿価純資産法)により算定した純資産に、数年分の任意の利益を加算した金額を譲渡額とする場合もある。
なお、加算対象とする利益の種類(税引後利益又は経常利益等)及び年数(通常1 年~3年)は事例ごとに異なり、交渉によって決まるケースが多い。

 

上記参考資料に基づき倍率法の数値例を整理すると、以下のようになります。

1.時価純資産の算出

①簿価純資産:400

②純資産調整項目
・土地の含み損 ▲100
・保険の解約返戻金 +20
・役員退職金 ▲50

③時価純資産:270 (①+②)
*②の調整額に税効果を考慮する場合もある

2.加算する利益の計算

①営業利益:20

②調整項目
・役員保険料の減額 +5

③調整後営業利益:25 (①+②)

3.倍率法による価値計算

時価純資産 270 + 調整後営業利益 25 x 3年分 = 345

倍率法の考察

倍率法の主なメリットとしては下記が挙げられます。

①計算式がシンプルなため売り手・買い手双方が納得しやすい
②純資産額を評価パラメータに入れることで売り手による過去の実績を評価額に織り込んでいる
③営業利益に調整をかけることで、M&Aに伴うPL上のアップサイドとダウンサイドが明確になるため買い手としても納得感が高まる

一方、例えば買い手が上場企業である場合、M&Aの後には(M&Aの成否に関わらず)減損判定が必要となることが多く、その場合はDCF法に準じた評価がなされることが多いため、状況によっては倍率法で合意した価格をDCF法でも再度表現するような工数が発生する可能性があります。

また、調整後営業利益はあくまで実績に対して調整をかけた金額であり、将来の成長可能性やリスクファクターなどは織り込まれていないことから、買い手としてM&Aを失敗させないためには、M&Aの意思決定に関する根拠資料およびM&A後のモニタリング目的で、自社ケースとしての事業計画策定を検討する必要があります。

実際にM&AのプロフェッショナルであるPEファンドなどが買い手の場合は、想定し得るアップサイド・ダウンサイド項目のほぼ全てを反映させた財務モデルを準備しますが、事業会社が買い手の場合(特に同業者である場合)、知見があるゆえにそこまで細かな数字を気にしないこともあり、この点はM&A全体の成功率を高めるという観点からすると業界全体の課題と言えるかもしれません。

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